墓じまいについては、漠然と頭の中で考えてはみるものの、いつ、誰が、どうやって、何から始めれば良いのかさえも、一人で考えていると何も分からずに答えが出ないまま時間が過ぎ去ってしまいますよね。
一人で悩まずに、意志を通じ合える親族様などと一緒に問題解決に取り組めると良いのですが、皆様それぞれのご意見や時期・タイミングもぴったり合うことは希であり、誰かと一緒に話を進められるとは限りません。
「それじゃあ、前向きな墓じまいなんてできないじゃない。」と思われるかもしれませんが、そこは今後の生活や将来のライフスタイルをイメージすると避けては通れない問題だったりもするわけです。
では、どうすれば良いのか?
それは、まず、墓じまいをなされた方々の事例から紐解くと良い答えが見つかるのではないでしょうか。
本ページでは、実際に墓じまいをなされた方が、墓じまいに至るまでどのような事があり、いつどのように対処なされたのかを下記にまとめてみました。
少しでも皆様の参考になれば嬉しいです。
参考リンク:墓じまいの流れ|よくあるご質問(faq)入門編
墓じまいのタイミング
皆様は、いつ頃までに墓じまいを行いたいと思っていますか?
大体の方は”将来”や”そのうちに”と答えられると思います。
ではいつから墓じまいを考えはじめたのか?を聴くと10年前や15年前という答えが多く返ってきます。
詳しくお話を聴くと将来の為とは言いつつ、現在”今”すでにお墓参りは体力的負担や時間的負担が大きく「辛い」というご意見を多く耳にします。
要は、親戚同士間でのお気遣いもあり、具体的には話ができていないだけで親戚同士お互いに墓じまいを意識しているケースが殆どです。お互いに譲り合ってしまい話が進まないこともあるようですね。
実際には皆同じように年(歳)を重ね、若い頃のようにはいかなくなるため、供養を身近なものに変化させたいと考えることは自然なことなのです。
では、いったい”いつ” 供養を身近なものに変化させれば良いのか?と言いますと、”今”となります。
と言いましても、今すぐ事を進めるのではなく、今すべきことは、まずは家族・親戚の方と話をしてみることです。
そのときのポイントとして、ただ話をするだけでなく、キーマンになる方には相談を持ちかけるスタイルで話をしてみたり、ストレートに墓じまいを提案する事は避けて、自分たちはお墓参り後に体調を崩すことがあるなどのご事情を話し、その後に親戚内の誰かがそのお墓を使用(管理)できるのか?や具体的な墓守の適任者がいるのか?などを話してみることが良いでしょう。
そのお墓を相談(管理)する方がおられず、自分一人だけで決めて良い状況であればそれほど悩む必要も無いかと存じますが、親戚内にお一人でもそのお墓の身内となる該当者がいる場合は、必ずその方に相談することはトラブルを回避するためにも避けては通れないと思います。
焦ることなく、親戚間で落ち着いて相談してみることからスタートしてみて、その後時間を掛けて供養を身近なものに変化させられるように”今から”動いてみることをお勧め致します。
どれだけの方々がどのタイミングで改葬したの?
今、必要と考えている改葬(ご遺骨のお引っ越し)について、みんなはどれだけ考えているのでしょうか?
人の頭の中は読み取れませんので、実際にどれだけの方が検討されているのか明確には分かりませんが、実際に改葬が行われた件数は、厚生労働省発表 衛生行政報告例 / 統計 により公開されております。
こちらによりますと、2,011年(76,662件)に対して、2019年(124,346件)と9年間で1.6倍を超える増加となっております。 2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で減少しておりますが、それでも2020年(117,772件)、2021年(118,975件)とさほど変わりない数の改葬が行われたことがわかります。
とても多くの方が改葬を実施されており、やはり墓じまいを検討なされている方も非常に多いことが想像できます。
墓じまいが話題になりやすいタイミングとは?
自然に墓じまいの話題ができる時期・タイミングはあるのでしょうか?
お友達同士・ご近所同士なら、普段の会話の中でも気軽に墓じまいについての話題になるかもしれません。
しかし、実際に具体的な墓じまい話を親族とするとなると、気軽に話せない場合もあるでしょう。
では、最初の切り口はいつ、どうやって家族・親族に相談を持ち掛けたのか?
意外に思われるかもしれませんが、その答えの中で多かったのが、法事・法要の後です。
法事・法要時
法要時は親族が集まり供養をするタイミングですので、その集いで墓じまいの話題は難しいのでは?と感じるかもしれませんが、実際には法要後の話題ではお墓参りや維持管理の大変さは誰からともなく話題になりやすく、同意を得やすい機会でもあるようです。
また、同じ法事・法要でも、四十九日、百か日、一周忌など亡くなられてから時が短い法要よりも、十三回忌以降の亡くなられてから長く時が経った仏様の法要時に墓じまいの話は切り出しやすいようです。
十三回忌以降の法要とは次にあげる法要となります。
- 十三回忌(亡くなってから満12年)
- 十七回忌(亡くなってから満16年)
- 二十三回忌(亡くなってから満22年)
- 二十七回忌(亡くなってから満26年)
- 三十三回忌(亡くなってから満32年)
- 三十七回忌(亡くなってから満36年)
- 四十三回忌(亡くなってから満42年)
- 四十七回忌(亡くなってから満46年)
- 五十回忌’(亡くなってから満49年)
- 百回忌(亡くなってから満99年)
よく考えてみますと、親族皆一緒に年を取り、同じようにお墓(先祖供養)の心配をすることは、極めて当然なことなのかもしれません。
またその際、もしご自分から墓じまいを話題にするときは、お墓参りが体力的にきつい現状であったり、自分以外のどなたかもお墓参りは大変なのではないか?と気遣いをしながら、どなたかに相談することから始められると良いでしょう。
但し、そのお墓に埋葬されたばかりの方がいる場合は注意が必要で、その方のご家族を飛び越しての墓じまいの話題は避けた方が良い場合もあるようです。
特に田舎に長年続く親族皆で使っているお墓などは、家族だけでなくご親戚も埋葬されているケースもあることでしょう。
そのような場合に家族以外の方から墓じまいの話題は慎重にすべきであり、急いで進めることは避けた方が良いでしょう。
終活を開始するとき
終活をはじめる時に、エンディングノートを書きながら、まず最初に墓じまいから着手する方も多いようです。
年々墓じまいが体力的にもキツくなっていると感じているために「まずは墓じまい」と動きはじめて、その後のお墓参りをもっと身近で簡単なものにすると、終活を進めている実感を持てるそうです。
運転免許を返納したとき
いつも車で往復してお墓参りをしていても、年齢を考えて運転免許を自主返納することを検討している方も多いことでしょう。
実は、運転免許を返納する時期に、墓じまいを進める方も沢山いらっしゃいます。
そして、改葬先の新しい供養施設は、運転しなくても行くことが容易な自宅から近くの樹木葬や、駅近の納骨堂などを選ばれる方が多いです。
それにより、年齢を考えて運転免許証を返納したにも関わらず、近くに供養施設を購入したために「お膳よりもお墓参りの機会が増えた」とおっしゃる方も多いようです。
遺言の作成や死後事務委任契約を結んだとき
遺言書を作成するそのときに、実際に墓じまいを行動に移すこともございますが、遺言書に墓じまいについて記入することもございます。
死後事務委任契約にも係わることですが、例えば、御自身も慣れ親しんだお墓に入りたいが、その後お墓を守ってくれる後継ぎ様がいない。ご自分が最後のお墓の利用者になる。
そのようなシーンでは、御自身がお墓に入ってから何年後に、墓じまいをして御自身含めてお墓に入っていたご先祖様と共にどこに改葬して欲しいかなども明確に決めておく方法がございます。
墓じまい工事現場の観点から
次に受注業者目線からのアドバイスです。上記はお客様観点の記事でしたが、実際に墓じまい工事に関わる方の観点からみると、墓じまいに適した時期やタイミングはあるのでしょうか?
はい。ございます。
例えば、寒冷地でしたら積雪や凍結の中、重量の重い墓石を解体・撤去を行うことは大変な危険を伴いますので、よほどの事情がない限りはこの時期に無理な工事を行いません。
真夏にしても、水分・塩分補給や暑さ対策も十分に注意しながら工事も行いますが、墓地は過酷な条件の揃う現場も多くございますので、タイミングをみて無理な墓じまい工事は避け、気候に恵まれた危険の少ない時期に行うのが適切です。
とはいえ、実際に法事の日程が厳しい気候と重なるなどタイミングが難しい場合は、墓じまい工事を行うのは過酷な時期を見合わせて、先にご遺骨の引越し(改葬)のみを進めることも一つの方法です。
ご遺骨のお引越しが完了すれば、墓じまい工事はタイミングを見て凍結を避け雪解け時期に工事を行ったり、水道のない現場では真夏の炎天下を避けて涼しい時期に解体作業を行うなど無理のないスケジュールを組むということですね。
これなら法要時期、或いは親戚の方のご都合などにも合わせる事ができるかもしれませんね。
参考リンク:東京で墓じまいをするときのポイント
霊園・墓地管理者からの観点
民間霊園の管理事務所は定休日を設けているケースもございます。
その場合、定休日は一切の工事を中止としている霊園もございますので、その日、その時期は何か事故が起こっては大変です。
トラブルを避けるためにも墓じまい工事は行わない方が良いでしょう。
また、自治体管理の公営墓地なども、管理事務所や自治体窓口がお休みであったり土日祝祭日は一切の工事を認めていない場合がございます。このような場合もトラブル回避の観点から墓じまい工事は避けた方が良いタイミングと言えるでしょう。
同じく寺院墓地でも土日祝祭日やお盆・お彼岸・年末年始など、お寺の行事やお墓参りの方が増える時期には危険を回避するためにも境内の工事を禁止する場合が多くございます。
この時期も工事は避けておきましょう。
参考リンク:お墓は産業廃棄物ってホント?
まとめ
多くの人は墓参りが体力的・時間的に負担となり、墓じまいを意識しています。
しかし、具体的な話が進まず、状況は停滞していることが多いです。
供養を身近なものに変化させるべき時期は「今」です。
ただし、「今すぐ事を進める」という意味ではなく、まずは家族や親戚と話すことから始めるべきです。
「”今”が、相談を開始するタイミングである」ということです。
お墓じまいに関する相談相手がいる場合は、必ずその方に相談し、焦らず親戚間で相談することが重要です。
その後時間をかけて供養を身近なものに変化させられるように動き始めるとよいでしょう。
繰り返しとなりますが、焦らずに皆で相談し、供養を身近なものに変化させることを始めることがお勧めです。
工事時期や管理者側の事情も考慮しながら、ご自身にとって最適な時期・タイミングを調整し、より良い墓じまい供養を進められることを願っております。