最近の終活関連ニュースなどでも、放置される無縁墓の増加が騒がれおりますが、いったい何がそんなに問題なのでしょうか?
令和5年9月13日には、総務省からも無縁墳墓地に関する重要な発表がございました。
無縁墓が”百害あって一利なし”とも言われる理由。
ここでは、そんな話題の背景と問題点を探ってみようと思います。
総務省より発表 無縁墳墓を中心とした墓地行政に関する調査
令和5年9月13日、総務省より公営墓地における無縁墳墓に関する問題解消のための課題等を調査結果が発表されました。
この調査は、無縁墳墓の維持管理問題として、日本国内で公営墓地があると認識されている765市町村などへ今後の墓地管理の課題として調査したものです。
総務省は、墓石撤去の事例などを整理して市町村に紹介するなどの支援を行うよう厚労省に促しました。
出典:総務省|「墓地行政に関する調査 ー公営墓地における無縁墳墓を中心としてー」の結果資料(概要)
無縁墓・無縁仏が増えている理由
「無縁墓」が増え続けている背景には、お墓の後継ぎがいなかったり、相続人の不在などの理由がございます。
お墓は一度建てると、そう簡単に場所を移すものではないことから、お墓がある地域に親戚が誰も住んでいなかったり、親戚がいても、既に別なお墓の使用権利を所有しているため対象の御墓は誰も使わないなどのケースもあり、承継者が不在と判断される「無縁仏(むえんぼとけ)・無縁墓(むえんぼ・むえんばか)」の増加しており、お墓の社会問題と言われています。
「無縁仏」とは、供養をする親族や縁者が存在しなくなった状態の仏様のことです。
親族や縁者が存在しないわけですから、その仏様(無縁仏)が入っているお墓も大方「無縁墓」であると言うことになります。
無縁墳墓の整理を行うべき理由
- 雑草・草木の生育抑制:無縁墳墓が放置されると、雑草なども生え放題で近隣のお墓にも迷惑をかけることになります。
きちんと管理・整備を行うことで、雑草などの放置を抑制することができます。 - 防犯効果:無縁墳墓が放置されると、視界が遮られやすくなることから不審者が立ち入ることがあり、防犯上の問題も発生します。
これは無縁墓だけでなく、一般的な墓地にも言えることですが、管理・整備・整理を行うことで防犯抑止効果が期待できます。 - 老朽化対策:無縁墳墓が放置されると、草木が荒れ放題になり近隣の墓地をはじめとした施設にも影響を及ぼし、施設等の老朽化が進み、安全性に問題が生じる可能性がございます。
また、永年放置されることで経年劣化により地震による倒壊などの危険性が伴います。
こまめに整理を行うことで、将来の老朽化対策を期待できます。 - 社会的責任感:地域社会や自治体が墓地の整備や清掃を行うことで、地域の風習や文化を守り、社会的責任を果たすことができます。
- 敬意の表現:無縁墳墓の整理を行うことは、先祖に対する敬意を表明することにもなります。
墓地の清掃や整備を通じて、先祖を偲ぶ機会を得ることができます。
無縁墓を解体・撤去しないとどうなるの?
墓地内にあるお墓が無縁墓になってしまうと、墓地の管理者へ管理料が支払われなくなり、お参りをする方もいなければ植栽の管理もされずに草木が荒れ放題となるでしょう。
そうなると、そのお墓を虫や獣が住処としたり、周りのお墓にも影響がでてしまいます。
「無縁墓」をそのままにすることは、衛生的観点からも良くありませんし、何よりも危険です。
傾斜地や公道のすぐそばに建っている野墓地(家墓地・屋敷墓地)などの中には、古くから残る”みなし墓地”も多く、管理者が特定できないお墓も多くあることでしょう。
そのお墓をそのまま放置すると、倒壊の可能性を高めてしまい危険です。
危険なので、その無縁墓を解体・撤去したいと思っても、お墓ですのですぐに誰でも撤去ができるわけではないのです。
衛生面や危険性を考えても、無縁墓として残る可能性が高いお墓があるならば、ご自身で墓じまい改葬を行い、これまでとは別な形でご先祖の永代供養などをすることは、現代ニーズに沿った形であり望ましいと感じている方が多いようです。
無縁墓であると見なされなければ墓じまいはできません
お墓の使用者が使用権利を持っており、その方に連絡もつながらない状態が続いている等の場合は、墓地管理者が行政手続きに則り、官報に記載し、該当墓地に連絡場所を記載した立て札を一年間以上公示することが必要です。
この期間に、使用者などから申し出が無ければ、無縁仏とみなされ墓地管理者がお墓を解体撤去することができる様になります。
当然ですが、墓地管理者としては衛生面からも管理料収入確保の面からも、無縁墓のまま放置されることを嫌います。
例え撤去費用を負担してでも、無縁墓を解体・撤去するケースもございます。
公営墓地の場合は? 無縁墓の墓じまい対策!
では、この無縁墓が自治体などが運営する公営墓地の場合はどうなるのでしょうか?
公営墓地の管理者は、自治体です。
自治体は、衛生面・収入面でもマイナスとなってしまう無縁墓を解体・撤去して、衛生面を改善し、その墓地を必要としている他の方にご使用いただき、使用料や管理料の収入を増やさなくては大きな墓地の維持管理ができません。
では、そのお墓を解体・撤去する費用は誰がどこから支出するのでしょうか?
それは税金になりますね。
地域住民の皆様のご負担で維持管理も守られているわけです。
無縁墓が問題と言われる理由の一つには、当然ながら税金が使われていることも影響しているのかもしれません。
2020年度末の総務省調査では、765の市町村が公営墓地を管理しており、そのうち445の市町村は管理墓地内に無縁墓があることを把握していました。
引用元:総務省|公営墓地・納骨堂における無縁墳墓等の現状と課題
多くの場合は、管理料が支払われないことが理由で無縁墓の存在に気付くそうです。
管理料の滞納は238市町村で4億4798万1283円に達しました。(うち 3億1598万756円が過年度分)
自治体は無縁墓を放置されると困りますので、無縁墓にさせないように墓じまい補助金や東京都に代表される都立霊園の施設変更制度を設けるなどの工夫で無縁墓にしないさせないを効果的に実施しております。
しかし、全国で墓じまいや無縁墓が増えていても、各自治体が設ける墓じまい補助制度はまだまだ足りないと感じます。
これからの各自治体ごとの対策に期待したいところです。
見なし墓地の場合は?
次に、屋敷墓地、個人墓地、家墓地、野墓地など とよばれる「みなし墓地」の場合はどうでしょうか?
その家系専用の墓地が山間の斜面などに建っているのを見たことがあると思います。
このようなお墓も使用者や承継者、管理者も連絡がつかなかったり不明の場合もあるでしょう。
だとしても、こちらも第三者が勝手に撤去できるものではございません。
そもそも、お墓だと判断できる?
誰が見てもお墓の形に彫刻された文字内容もはっきりと見られる場合は、そのお墓の使用者や管理者を探すことになります。
問題なのは、それがお墓なのかがわからない状態の場合です。
経年劣化で彫刻内容も判別できず、お墓のようにも石像のようにも見えるなど、役場でも個別に把握されていない場合も多くございます。
その土地の詳しい方に聞いてみても、それが正確な情報かを証明する手立てが少ないことが多いでしょう。
また見なし墓地ですと、おそらくその土地の地目も”墓地”ではない状態であり、土地が売価対象となるケースも考えられますが、その土地に墓石なのか石像なのかもわからないものが設置されているとしたら、誰かがその土地を買いたいと思うでしょうか?
おそらく、同条件の何も設置されていない土地と墓石や石像が設置されている土地では、前者が選ばれるでしょう。
このように、後の用途としての利用が懸念されることも考えられますので、もし、ご自身に関わりのある無縁墓・無縁仏を把握している場合は、早い段階で無縁墓の墓じまいを行い、埋葬されているご遺骨を別な形で供養することをお勧め致します。
合わせて読みたい:墓じまいの費用・相場・目安
将来、無縁墓になる墓地の使用者がすべきこと
無縁墓が百害あって一利なしとも言われる理由がお分かりいただけたことと思います。
それでは、無縁墓を回避する方法を使用者視点から見て何ができるのでしょうか?
無縁墓になる墓地(将来、後継ぎ・墓守がいなくなるお墓)を所有している親族様は、まず、事前に近親者間で話し合うことが大切です。
立つ鳥跡を濁さずという考えで、墓じまいを進めたいお気持ちも重々同感ですが、近親者の中にはもう少しお墓参りがしたいという方もいるかもしれません。
もっとも、マスメディアでも取り上げられることが急増し、墓じまいが増えている昨今では、親族が墓じまいに反対しているという話も聞かなくなってきましたが、念のため確認(相談)しておくことは今後のトラブル回避の為にも良いことでしょう。
コロナ禍以降、親族間でも疎遠になってしまっているなと感じられたときは、これを機にSNSや電話一本で交流を再開するのも良いのではないでしょうか。
近親者との会話の後は、専門業者(工事当業者)・各墓所管理者・管轄役場と墓じまいを進めることになります。
無縁墳墓改葬サポートの心得
私共は、
- 所有者様、管理者様の意思を尊重し、法令や規則に沿った方法で行います。
- 無縁仏に対して敬意持ち、丁寧な作業を心がけます。
- 地域の慣習や風習に配慮致します。
- 全ての石塔に対して改葬する必要があるかどうかを確認します。
- 遺骨にも敬意を払い、取扱いには十分に注意致します。
- 供えられていたものなどを適切に処分致します。
- 必要な許可や手続きを行い、法令に従います。
無縁墓になることが分かっているお墓は、できる限り放置せずにご自身(お身内)の責務として、改葬(墓じまい)をなされることを推奨いたします。
参考記事:墓じまいをした理由
参考記事:墓じまいを安くする方法
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