都立霊園の「施設変更制度(しせつへんこうせいど)」は、東京都が運営する都立霊園の使用者だけが申請できる制度で、”墓じまい”改葬の費用を大幅に抑える効果がある制度と言えます。
墓じまいを検討中の方は、改葬の費用を抑えるために、自治体から補助金はあるのかな?と問い合わせてみた方も多いのではないでしょうか?
この施設変更制度は、墓じまい補助金とは異なりますが、墓じまいの改葬費用を抑える効果が期待されています。
施設変更制度とは?
東京都立霊園の使用者でお墓の承継者(継ぐ人)がいない方を対象とした制度で、使用中の墓所を返還して、遺骨を合葬埋蔵施設に埋蔵(改葬)することができます。
東京都が使用者に代わり、遺骨をお守りしていく制度です。
この施設変更制度を適用できるのは、都立霊園内の「一般埋蔵施設」「芝生埋蔵施設」「小型芝生埋蔵施設」「壁型埋蔵施設」「長期収蔵施設みたま堂」をご利用中の方となります。
※都立霊園は全部で8か所あり、使用者数は約30万人です。
- 都立青山霊園(住所:〒107-0062 東京都港区南青山2丁目32−2)
- 都立谷中霊園(住所:〒110-0001 東京都台東区谷中7丁目5−24)
- 都立染井霊園(住所:〒170-0003 東京都豊島区駒込5丁目5−1)
- 都立雑司ヶ谷霊園(住所:〒171-0022 東京都豊島区南池袋4丁目25−1)
- 都立小平霊園(住所:〒189-0012 東京都東村山市萩山町1丁目16−1)
- 都立多磨霊園(住所:〒183-0002 東京都府中市多磨町4丁目628)
- 都立八王子霊園(住所:〒193-0826 東京都八王子市元八王子町3丁目2536)
- 都立八柱霊園(住所:〒270-2255 千葉県松戸市田中新田48−2)
施設変更制度の手続き方法は、上記8霊園すべてほぼ同じです。
合葬埋蔵施設とは
「合葬」ですので、ご遺骨は骨壺から出して他の方のご遺骨とも混ざる埋蔵方法になります。
よって、原則、合葬埋蔵施設にご遺骨を埋葬すると、個別にお骨を取り出すことはできなくなるため、その後の改葬が難しくなります。
これをデメリットと感じられる方もいるかもしれません。
お骨を取り出した後は、今まで使用していた墓所を原状回復(更地)して東京都に返還することになりますので、墓所に建っているお墓の解体・撤去(墓じまい)が必要になります。
※ 原状回復工事(お墓の解体・撤去)を行い、該当の墓地を更地にしなければ、墓所を返還したことにはなりません。
※都立霊園は全部で8か所ございますが、この内、合葬埋蔵施設があるのは、都立小平霊園・都立多磨霊園・都立八柱霊園の3施設のみです。
(都立多磨霊園は、遺骨合葬安置スペースが無くなり募集を終了しておりましたが、2023年度より、受付を再開致しました。)
都立小平霊園 合葬埋蔵施設 〒189-0012 東京都東村山市萩山町1丁目16−1 | |
都立多磨霊園 合葬埋蔵施設 〒183-0002 東京都府中市多磨町4丁目628 | |
都立八柱霊園 合葬埋蔵施設 〒270-2255 千葉県松戸市田中新田48−2 |
・刻字について
多磨霊園及び小平霊園の合葬埋蔵施設では、施設に備え付けの石製の墓誌に、埋蔵者名を刻字(有料)することができます。小平霊園(8,000円/1名)
八柱霊園合葬埋蔵施設では、電子式(タブレット端末)の墓誌を設置しており、埋蔵年月日及び埋蔵者名を表示(無料)できます。
施設変更制度利用のメリットと気になる料金は?
施設変更制度の利用者様が費用を負担する項目は、
- お墓の解体・撤去費用
- ご遺骨の改葬(搬送)費用:(必要に応じて)
- 改葬許可申請に必要となる「埋蔵(埋葬)証明書」の発行手数料(400円)
- 改葬許可申請に必要となる施設変更使用許可証の郵送料(切手530円分)
- 住民票・印鑑登録証明書を各1通分の料金
新しい埋蔵先である都立霊園内の合葬埋蔵施設では、使用料や年間管理料など料金は不要となる制度です。
また、施設変更申請をなされた使用者様及びその配偶者様、又はパートナーシップ関係の方は、申請時に登録することにより、将来、合葬埋蔵施設に埋蔵(共同埋蔵)することができます。生前予約が可能ということですね。
しかも、この場合も使用料及び管理料はかかりません。
これも大きなメリットと言えますね。
お墓の手入れ | 墓地使用料 | 年間管理料 | |
一般埋蔵施設 | 利用者が行う | 利用者負担 | 利用者負担 |
合葬埋蔵施設 | 不要 | 不要 | 不要 |
一般埋蔵施設の年間管理料(1㎡当たり)は730円/年、芝生埋蔵施設は920円/年です。
”お墓の維持費”と”将来的な供養”の問題が解消されそうですね。
これだけの優遇がございますので、都営霊園利用者の墓じまいが増えているのも納得ができます。
施設変更制度を利用できれば、あとは今あるお墓の解体工事(墓じまい工事)だけで済んでしまいますね!
墓じまい工事の料金は、1㎡あたり10万円などと面積に応じて表現されていることをよく目にしますが、墓地の立地やアクセスなどによっても異なりますので、広い面積のお墓ですと1㎡あたり3万円台になることもございます。
費用をおさえるための概算参考として、下記の自動見積り機能でご自身で見積を作成してみてください。
7つの選択だけで見積りを作成できます。
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施設変更制度の申込期間は?
令和6年度(2024年度)の「施設変更制度」詳細内容は令和6年4月に発表されました。
例年、7月・10月・12月に申込み受付されることが多いです。
受付期間 | 許可予定日 | |
第1回 | 7月2日(火)~7月18日(木) | 令和6年10月中旬 |
第2回 | 10月2日(水)~10月18日(金) | 令和6年12月下旬 |
第3回 | 12月2日(月)~12月18日(水) | 令和7年3月初旬 |
例年は年に3回の申し込み期間がございますが、仮申し込みは年末年始(12月29日~1月3日)を除いて、通年受け付けております。
仮予約受付後、受付期間中に霊園管理事務所より申請手続き書類等が別途送付されます。
施設変更制度の利用方法・流れ
実際の申し込みは、利用者の方が霊園管理事務所へ施設変更制度の申請意思を伝えるところからはじまります。
施設変更制度の申請書類を取り寄せ
お客様よりご使用中の各都立霊園の管理事務所に書類を取り寄せていただくことになります。(原則、使用者様以外の取り次ぎはできません。)
取り寄せられた施設変更の申請書類をご送付いただければ、墓じまい専門業者でも代行作業をお引き受けできます。
墓石解体撤去工事(墓じまい原状回復工事)のご契約を取り交わし後、申請書類の中の「施設変更に係る誓約書」への記入と社判を押印させていただきます。
※ 但し、実印が必要な書類もございますので、あらかじめご自身で実印・捨印を押印してから、書類一式を業者へ渡しましょう。実印の預け渡しは避けましょう!
都立霊園「施設変更制度」の無料相談 TEL:0800-080-9848
都立多磨霊園 TEL:042-365-2079
都立小平霊園 TEL:042-341-0050
都立八王子霊園 TEL:042-663-1533
都立八柱霊園 TEL:047-387-2181
都立雑司ヶ谷霊園 TEL:03-3971-6868
都立青山霊園 TEL:03-3401-3652
都立谷中霊園 TEL:03-3821-4456
都立染井霊園 TEL:03-3918-3502
郵送で送られてくる書類の種類は下記の3点です。
- 埋葬施設使用終了届け(実印押印が必要です。)
- 施設変更申請書(実印押印が必要です。)
- 施設変更に係る誓約書(実印押印・解体工事業者の社判押印も必要です。)
取り寄せる書類以外に必要となる用意すべきもの。
- 改葬許可申請に必要となる「埋蔵(埋葬)証明書」の発行手数料(400円)
- 改葬許可申請に必要となる施設変更使用許可証の郵送料(切手530円分)
- 住民票(本籍記載でマイナンバーが記載されていないもの)を1通
- 印鑑登録証明書(発行日が申請日より3カ月以内)を1通
- 実印
- 認印(三文判)
- 使用していた墓地の霊園使用許可証「埋蔵施設 使用許可証」
上記書類を揃え申請後、「合葬埋蔵施設 使用許可証」が、受付期間終了から約2ヶ月後に簡易書留で郵送されます。
(改葬手続きや御埋葬の際に必要となりますので、大切に保管してください。)
改葬許可申請手続きを行う
「合葬埋葬施設使用許可証」がお手元に届きましたら、ご遺骨を合葬埋蔵施設に埋蔵(改葬)するために、改葬許可の取得に向けて改葬許可申請手続きを行います。
通常、改葬許可申請の手続きには少し複雑な手順が必要となりますが、都立霊園の施設変更制度をご利用の場合は、管理事務所が改葬許可申請書の準備をお手伝いしてくれますので、使用者様は必要な書類等(合葬埋葬施設使用許可証・埋蔵証明書発行手数料400円・認印の3点)をご用意の上、現在お墓がある都営霊園管理事務所の窓口にて改葬許可申請書を作成します。
この改葬許可申請書の作成は代行業者にお任せできます。
その後、役所にて「改葬許可証」が発行されます。
「改葬許可証」の交付を受けますと、合葬埋蔵施設へのご納骨が可能となります。
施設変更制度申請時点に未納となっている管理料等がある場合は、全額を支払う必要がございます。
参考情報:墓じまい改葬の手順
閉眼供養・ご遺骨出し・合葬埋葬施設への埋葬
改葬許可申請等の行政手続きが完了致しますと、まずはお墓の魂抜き(閉眼供養・お務め終え)を行い、お墓からご遺骨を取り出し、合葬埋葬施設へご移動いただき改葬致します。
これらの行事を一日で行うことが多く、また、合葬埋葬施設への埋葬はあらかじめ霊園管理事務所で予約が必要なため、「霊園管理事務所」・「お墓からご遺骨を取り出す業者」・「参列なされるご親族」・「必要に応じて閉眼供養で読経を依頼する僧侶」、それぞれの日程調整が必要となりますので、これら業務の大部分を一括で引き受けてくれるワンストップサービスの墓じまい業者へ依頼すると便利です。
参考リンク:閉眼供養の僧侶手配サービス
尚、合葬埋蔵施設へ納骨する日に、霊園管理事務所へご持参いただくものとして、
・合葬埋蔵施設使用許可証(原本)
・改葬許可証(原本)
・印鑑(認印)
の3点が必要です。
都立霊園 各合葬埋蔵施設の場所
誇大な敷地の都立霊園です。
園内で合葬埋蔵施設の場所を探されている方が多いので、下記の画像で各合葬埋蔵施設の位置確認にお役立てください。
毎年10月1日(都民の日)には、小平霊園・多磨霊園・八柱霊園の合葬埋蔵施設で合同献花式が開催されます。
※献花式開催中は、個人で行う法要等はご遠慮いただくことになります。
墓じまい工事を行う。
これまでご使用なされてきたお墓の墓じまい工事(お墓の解体・撤去・原状回復更地戻し工事)行います。
※ 注意1:「合葬埋葬施設使用許可証」交付されてから60日以内に墓所を返還する必要があります。
※ 注意2:返還工事終了届けが年度末の3月31日を経過しますと、新年度の管理料が発生しますので、第3回(12月申込み分)の申請には、解体工事の契約を早めるなどの注意が必要です。
※ 埋蔵施設の種別によって現状回復工事の内容・方法が異なります。
- 一般埋蔵施設(一般墓所):墓石、カロート(納骨棺)、囲障(塀や柵)、樹木があればその撤去(伐採、伐根)、地固め及び整地(更地工事)
- 芝生埋蔵施設(芝生墓地):墓石、台石、線香立ての撤去
- 壁型埋蔵施設(壁墓地):家名板、花立て、線香立ての撤去
- 長期収蔵施設みたま堂:家名板の撤去
その他、私共にお墓の解体・撤去工事をお任せいただけますと、工事に関する必要書類は全て責任を持って届け出を致します。
原則必要な書類は、
施工前:返還工事着工届け・工事前画像(墓所正面全景と隣接墓所を含めた画像)の提出。
施工後:返還工事終了届け・工事画像(カロート撤去前、カロート撤去後、整地後の画像)の提出。
注)名義人が亡くなっている場合!先に承継が必要!
都立霊園では、お墓の名義人(使用者)が死亡している場合、最初に使用者の名義変更が必要になります。
名義変更をしないと、墓じまいや施設変更(改葬)ができません。
現在使用中の都立霊園管理事務所へ承継手続きに必要な書類一式を申請します。
■必要な書類等
・承継使用申請書・・・実印と捨印を押していただきます。
・誓約書・・・実印と捨印を押していただきます。
・印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
・戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの)
・使用者(名義人)と申請者の戸籍上のつながりが確認できる戸籍謄本等
参照:東京都公園協会 戸籍上のつながりの確認例[PDF]
・東京都霊園 使用許可証(紛失の場合は直近の霊園管理料の領収書、口座振替をしている場合は口座振替通知書)
・手数料1,800円 ※現金(※承継手続きと施設変更手続きを同日に行う場合は、手数料の1,800円は不要です。)
・郵送料として530円分の切手
・使用者(名義人)の死亡記載の戸籍謄本類
・申請者(承継される方)の名前が記載された葬儀の領収書や寺院の公印ありの法要証明書など。(これらが無い場合は、僧侶に追善法要を依頼し証明書を発行してもらう方法もございます。)
また、申請者(承継される方)と喪主が異なる場合は、喪主名義の推薦状を作成いただき、喪主名の実印と印鑑証明が必要になります。
承継使用申請書と誓約書は都立霊園窓口または東京都公園協会霊園課に書類を備えてあります。
施設変更制度が利用できる施設
都立霊園にある施設の種類は、
- 一般埋蔵施設
- 芝生埋蔵施設
- 小型芝生埋蔵施設
- 壁型埋蔵施設
- 合葬埋蔵施設
- 立体埋蔵施設
- 樹林型合葬埋蔵施設
- 樹木型合葬埋蔵施設
- 長期収蔵施設
- 短期収蔵施設
- 一時収蔵施設
がございますが、
このうち施設変更制度が利用できる施設は、
1.一般埋蔵施設、2.芝生埋蔵施設、3.小型芝生埋蔵施設、4.壁型埋蔵施設、9.長期収蔵施設の計5施設です。
9.の長期収蔵施設とは、多磨霊園のみたま堂のことで、収蔵期間が30年間ですので期限後の供養施設確保として施設変更制度の対象となります。
その他、合葬式の埋葬施設は元々合葬されているため施設変更制度の対象外です。
6.立体埋蔵施設は個別埋葬期間20年を過ぎると自動的に合葬埋葬となるため施設変更制度の対象外となります。
10.短期収蔵は雑司が谷霊園の「崇祖堂(すうそどう)」(一年毎更新施設で最大5年間保管可能)ですので、こちらも対象外です。
11.一時収蔵施設は、雑司ケ谷霊園、八柱霊園、多磨霊園にある施設預かりで施設変更制度は対象外です。
施設変更制度をご利用にならない場合
お墓の購入に比べると「お墓じまい(改葬)」の手続きは複雑です。
現在の墓地管理者や自治体窓口で行政手続き用書類(改葬許可申請等)のやり取りが必要となり、また新たに埋葬(埋蔵)する墓地管理者へ必要書類(受入証明書など)の発行手続きが必要となるケースもございます。
弊社、九曜社では、改葬・墓じまいに関する面倒な行政手続きにつきましても丁寧にサポートを致しておりますので、お気軽にご相談ください。
参考リンク:改葬先のお墓探し「ごくようば」
併せて読みたい:墓じまい代行サービス
なぜ、今、施設変更制度が必要なの?
都立霊園 施設変更制度は、これからの供養のかたちに寄り沿った素晴らしい制度ということは認識しておりますが、なぜ今、これだけの注目を浴びているのでしょうか?
まずは、日本全国と東京都内の改葬件数の関係から探ってみたいと思います。
東京都内では毎年多くの改葬が行われております。
東京都内の改葬件数|増加推移
東京都内では毎年どれだけの方が改葬してご遺骨を移動しているのでしょうか?
上記グラフは2009年度から2023年度までの東京都内で行われた改葬件数です。
2009年度の改葬件数は5,750件に対して、2023度年の改葬件数は14,950件(過去最多数)14年で約2.6倍になっており、東京都では今後も墓じまい需要は拡大すると見られております。
日本全体の改葬件数は、2011年度が76,662件に対して、2023年度が166,886件と約2倍になっており、東京都の改葬件数は国内でも高い推移で増えております。
出典|参照:令和5年度衛生行政報告例 統計表|e-Stat 政府統計の総合窓口
都立霊園は、全8霊園で使用者数は約30万人にのぼり、年間約8千件の承継(名義変更)があります。
逆に、承継されずに無縁化してしまう数も相当数あるでしょう。
では、その無縁化や承継されないお墓の数はどれくらいあるのでしょうか?
東京都内の無縁化による改葬件数と都立霊園の募集数から読み解いてみましょう。
無縁墳墓の改葬件数|全国割合と比較
無縁化による改葬件数は、年によってのばらつきはございますが、全国に対して東京都の割合が増えているように見受けられ、直近の2021年で全国の無縁墳墓の改葬件数3309件に対し、東京都内は878件と、東京都が日本全体の約26.5%の割合に膨れ上がっております。(878/3309×100=約26.5%)
出典:令和3年度衛生行政報告例
因みに、人口では、13,515,271人(東京都)/127,094,745人(全国)×100=約10.6%
出典:総務省統計局「統計でみる市区町村のすがた2022」
改葬件数では、10830件(東京都)/118975件(全国)×100=約9.1%
と、人口も改葬件数も、日本全国に対して東京都の割合は10%前後ですので、大方比例しており納得できます。
では何故、東京都の無縁墓改葬の割合が約26.5%と、これほどまで大きいのか?
都道府県によって調査方法やタイミングも異なる可能性もあるため、明確な答えはわかりませんが、いずれにしても人口の多い東京都にとって無縁墓対策は急務であると思われます。
無縁化で困ること
無縁化した無縁墓が発生すると、そのお墓を管理、解体撤去をするのは誰でしょうか?
それは、その無縁墓がある墓地の管理者です。
一般的に墓地の管理者は、寺院などの宗教法人、自治体、公益法人になります。(因みに、民間霊園の管理・事業主体は宗教法人=寺院であることがほとんどです。)
無縁墓となったお墓の管理、解体撤去にかかる費用等は、すべて墓地管理者の負担となります。
無縁墓が発生した場合、そのお墓を放置すると、草木が生え、害虫や獣を寄せ付け、周りのお墓にも悪影響を及ぼします。
維持・管理業務は増加しますが、無縁墓ですので管理費収入は途絶えたままです。
衛生面からも無縁墓を放置して良いことはないので、早い段階で更地に原状回復させなくてはいけません。
しかし、無縁墓の改葬・墓じまいは墓地管理者と言えども、すぐに勝手に墓じまい改葬を行うことは禁じられております。
墓地管理者が墓じまいをするためには、該当墓地の利用者が一定期間(一般的には3~5年程)管理料を滞納し、墓地使用者や承継者が不通・不在などの場合、官報に記載し、該当する墓所の見やすい位置に「墓地整理告示」の立札を一年間立てて公示しなくてはなりません。
「墓地整理告示」の立札には、「無縁墓地の整理を進める過程で、墓地使用者や権利者、また故人の関係者の方は管理事務所にお越しください。連絡先TEL:00-0000-0000」などの内容が記載されております。
この期間内に申し出がなかった場合、はじめて無縁墓とみなされ、墓地管理者は該当墓石の撤去・改葬が可能となります。この期間中にも維持管理費用はかかります。
都立霊園のような公営墓地では自治体が墓地管理者と言えますので、無縁墓の「墓地整理告示」の立札費用から解体撤去等の費用まで、その地域住民(都立霊園の場合は主に東京都民)の税金を使って行い、更地に戻し、区画割りを検討した後、年に一度の墓地使用者再募集として公募されます。
毎年、都立霊園では多くの墓地が公募されますが、裏を返せばそれだけ多くの返還墓地や無縁化が発生しているということになります。
都立霊園の公募数と返還墓地の関係
2024年度(令和5年度)の都立霊園募集数は、
都立多磨霊園:一般埋蔵300区画
都立小平霊園:一般埋蔵95区画・芝生埋蔵5区画
都立八王子霊園:芝生埋蔵120区画
都立八柱霊園:一般埋蔵315区画
都立雑司ヶ谷霊園:一般埋蔵60区画
都立青山霊園:一般埋蔵60区画
都立谷中霊園:一般埋蔵65区画
都立染井霊園:一般埋蔵75区画
合計 1095区画です。(合葬・樹林区画等は除く)
また、都立霊園では無縁墓や返還墓地がすべて更地に整地されているわけではなく、様々な事情で手つかずの状態のお墓も相当数存在するであろうと思われます。
以上のことから、多くの区画数を備える都立霊園では、無縁墓が増えて解体撤去費用や維持管理費用が膨れ上がるのを防ぐ為にも、承継者がいない皆様に墓じまいの費用負担を大幅に減らせるであろう【施設変更制度】をご利用いただき、都民の無縁墓を回避するという大きな役割があります。
東京都では、都立霊園の墓じまいがスムーズに進むように様々施策が組まれております。
併せて読みたい:都立霊園に限らず東京のお墓を墓じまいする場合の知識↓
施設変更制度、墓じまい補助金の必要性
本ページでは施設変更制度をクローズアップしましたが、東京都立霊園だけではなく、東京都内の公営墓地、そして、全国47都道府県の各自治体でも同じような悩み・危機感を感じている方は多いはずです。
東京都の施設変更制度と同様に、各自治体管理の永代供養墓や合祀墓などを利用して、自ら墓じまいをなされる方の先祖遺骨とご自身・配偶者の遺骨は、無料(または低料金)で自治体管理の永代供養墓に入れるなどの制度が増えることを期待しております。
また、無縁仏を多く放置して無縁墓の危険性を将来に残すよりも、今、早急に各自治体が中心となって、ご先祖様の身近な供養を検討なされている方に対しての墓じまい補助金等を活用できるように、ご供養の道筋を立てていただきたいと願います。
追記:令和5年9月13日に、総務省からも無縁墳墓に関する重要な発表がございました。
詳しくは無縁墓の墓じまいをご覧ください。
併せて読みたい:墓じまい補助金・助成金
施設変更制度っていつからあったの?
今回、墓じまいを意識してからはじめて聞いた方も多いと思いますが、この「施設変更制度」はいつからあったのでしょうか?
答えは、平成15年(2003年)です。
平成15年(2003年)より始まった施設変更制度は、多磨霊園に合葬式墓地が整備されたことに伴い、将来の無縁仏問題への対策として試験的に開始されましたが、墓じまい需要の増加と共に利用範囲が拡充され、多磨霊園・小平霊園・八柱霊園に設置された合葬埋蔵施設への改葬が(手数料のみで)利用できるようになりました。
当時は、「墓じまい」という言葉も存在しておりませんでしたが、家族環境などから御自身の後に継承者(墓守)がいないなどの悩みを抱えた利用者が多いことから考えられた、東京都の施策です。
2003年ということは、20年以上前から利用されていた制度なのですね。
東京都に人口が集中している影響もあるのでしょうが、東京都霊園管理部門は現代ニーズと将来の問題点を洗い出し、墓地整備の対応が非常に早かったと感じます。
施設変更制度が開始して20年経過した現在、非常に多くの方々がスムーズに制度を有効活用なされている現状を見ると、20年以上前の考察力の賜物と言えるでしょう。
因みに、2021年度(令和3年度)の施設変更制度利用は過去最多の730件とのこと。創設された2003年度の7倍に上るほど人気の制度です。